アトピー・乾癬・糖尿病・難病   脾臓は大事な臓器

≪血液の若さ≫を守る、隠れた働きもの≪脾臓≫の仕組み

 

「若さ」つて、誰もが憧れますね。でも 「血液の若さ」なんて、考えたことありますか? 体の

隅々まで酸素が巡るためには、血液中の細胞が、若くなければいけないのです。その大役を担うの

が左脇腹の奥にある「脾漉J。知名度はあまり高くないですが、とっても大事な鹿器なのです。

 

私たちの体の中を、隅々まで巡る血液。ドックドックと脈打つ拍動は、まさに体が生きている証といってもいい。

 

 血液の最重要機能は、酸素を運ぶこと。体内に60兆個ある細胞はどれも、酸素がなくては生きていけない。十分な酸素を届けるため、体の中は隅々まで血管が張り巡らされている。

 

そして、実際に酸素を運んでいるのが、血流に乗って流れる細胞r赤血球」だ。

赤血球は直径78mほどの円盤状の細胞。全部で20兆個もあるというから、全身の細

胞の3分の1は赤血球なのだ。内部はヘモグロビンというたんばく巽で満ちている。このヘモ

グロビンが、酸素分子をくっつけて運ぷ担い手だ。

 

とこるで、体内で最も細い血管は、直径5mほどだという。若い赤血球はアメーバのよ

うに変形して、自分より細い通路を楽々通り抜けるのだが、こういう柔軟性は時間とともに衰

えていく。私たちも、たまにストレッチなどをすると、体の固さに唖然とすることがあるけれ

ど、年を取ると柔軟性が失われるのは赤血球もー緒なのだ。固くなった赤血球は、狭い血管を通れない。

そこで体の中には、古い赤血球を取り除く特別な装置がある。それが「脾巌」だ。

 

■赤血球の寿命は120日 古くなったら 壊される

脾臓は、握りこぶしほどの大きさの臓器で、重さは100gほど。左脇腹の奥、胃と腎臓の間にひっそ

りと鎮座している。

 

 「脾臓」の働きを一言でいうなら、血液中の異物を取り除く‘フィルターホです」

 

 しくみは。動脈から脾臓に入った血液は、「静脈洞」と呼ばれる筒の中へ流れ込む。この筒の壁には多数の隙間が空いており、若くて柔らかい赤血球ならするりと通り抜けられるが、固くなった古い赤血球は、隙間を通れ

ずに引っかかる。

 

 「脾臓には、マクロファージなどの免疫細胞がたくさん待機しています。引っかかった赤血球は(異

物)として、マクロファージが食べてしまうのです」

 

 赤血球の寿命は120日ぐらい。毎日約2000億個の古い赤血球が破壊され、同じぐらいの数が生まれ

ている。そうやって若さを保っているから、酸素が全身に行き渡るわけだ。


1.古くなった赤血球はフィルターに引っかかる

脾臓に入った血液は、静脈洞(脾洞)という菅へ回収されて外へ出て行く。静脈洞の壁には隙間

が空いていて、これがフィルターとして働く。古い赤血球はこの隙間を通過できない。

2.トラップされた古い赤血球をマクロファージが食べる

 フィルターに引っかかった古い赤血球をマクロファージが貪食する。そのとき鉄分が回収され、

新たに赤血球を作る材料として骨髄(赤血球が作られる場所)へ提供される。

3.紛れ込んだ微生物などを 免疫細胞が捕まえる

 脾臓の中には、免疫反応を担当する細胞がたくさん待機していて、血液中に細菌などの微生物が

入り込むと、すぐに処理する。腸管と並ぷ、体内の免疫システムの中心臓器だ。

 

ところで、壊される古い赤血球の中には、捨てるにはもったいない成分も含まれている。

 

 「ヘモグロビンは鉄分を含んでいます。これは脾臓の中で回収され、新しい赤血球を作る材料として

リサイクルされます」

 

 一方、鉄分を取り除かれたヘモグロビンの断片は不要なので、ビリルビンという物質になって肝臓へ送られ、さらこいろいろ代謝されて最後は便や尿へ捨てられる。便や尿が黄色っぼいのは、ビリルビン代謝物の色だという。そうか、うんちの色も、元は酸素を運んでいたのかあ。

 

■免疫にも活躍する 侵入した微生物を処理

 

 血液の中には、ときに、外界からも異物が入ってくる。特に問題なのは病原性の微生物だ。そんな非

常事態から身を守るためにも、脾臓は働いている。

 

「脾臓には、全身のリンパ球の4分の1が集まっていて、微生物などの異物も速やかに処理します。全身の免疫機能の要といってもいいでしょう」

 

 進行した胃がんの手術などで、脾臓を切除することも多いという。「摘出しても通常は問題が起きないので、昔は大した機能を持たないと見られていたのですが、近年、摘出すると重症の感染症のリスクが高まるとわかってきました」。そのため最近は、脾臓を温存する手術が広まっているという。地味な臓器だけれど、血液の若さと、身の安全を、しっかり守っているのです。ぜひ覚えておいて下さい。